やまだ おさむのマンションコラム:「八軒長屋」
「管理」のすすめ

創作落語に「ぜんざい公社」があります。――新しく設けられたぜんざい公社の広告を見て、珍らしもの好きの男がやってきます。まず無愛想な受付で身分証明書を要求され、次には健康診断が必要と無理やり受診させられ検診料を払わされる。ぜんざいの餅は焼いたほうがよいか<生>のままでよいかと聞かれる。

焼いてくれというと火気使用許可書などをとりにやらされ、そのつど窓口で待たされ手数料を取られる。やっと書類が揃ってぜんざいにありつくが、食べてみると甘くも何とも無い。「このぜんざいは甘くない」「はい、甘い汁はみんなこっちで吸うてあります」――というオチで幕が下ります。

この噺はマンションを買う場面の、契約から内覧会そして引渡しという一連の手続きにダブって映るのです。お金を出して買うほう(購入者)でなく売るほう(売主)のペースで進んでゆく。もちろん「甘い汁」などというものは決してあるはずはありません。

言うまでもなく分譲マンションは「住む」対象であり、かつ「持つ」対象でもあります。少し大げさに言えば、「居住者」という立場と「住宅事業に投資する」立場を合せ持っていると言えます。言いかたをかえると、分譲マンションに住むとは「賃借人が自分である賃貸住宅事業の経営である」とも言えます。

個人事業主であれば自己責任のもと、「経営感覚」と「経営判断」を求められる立場に立たされます。そこで、こんな疑問が出てきませんか。

・ 土地と建物の価格を知らなくては
・ 廊下やエントランスなどの出来上がりの検査は誰がやるのだろう
・ 規約の説明があってしかるべきなのでは

一連の手続きが規模の大きな建物の場合、ディペロッパーのペース(案内)で進むことは当り前のことです。しかしそこで扱う内容は徐々に変わってゆくべきです。

過去に「一定期間居住して(高く)売る」ことを続けてきた分譲マンションでは建物自体の価値を無視してきましたが、土地のキャピタルゲインが過去のこととなったことを誰もが知る今日、建物の価値にもっと注目すべき時期に来たと考えるべきです。その視点は「建物の価値を如何に減らさないか」という視点です。

積極的にも消極的にも、建物が壊されるまで住みつづけることを考えた時、自分の持ち物(所有する)である「住む箱」以外の廊下や階段、公園や植えられた樹木という、みんなの持ち物である「共有の部分」にも目を向けよう。これらをセットで考えてゆくことがマンションを「本当に持つ」ことにつながるのです。

このことは、都市の住まいとして市民権を得たマンションが本来具備していなければならないものだし、環境負荷面からも要請されているものです。このことは、結果として「管理」に眼を向けることになります。

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